掌蹠膿疱症の基礎的な知識を4つの項目にまとめました。
はじめに、私は掌蹠膿疱症を、症状が表れてから約1年で治しました。
治療を開始してからでもなければ、病院に行ってからでもなく、発症から1年です。
↓ にも書きますが、掌蹠膿疱症は難治性の慢性皮膚疾患で、原因は明らかになっておらず、治癒するのに3~5年かかるといわれています。
それが1年で治ったということは、私の考え方と対応方法が、正しく適切であったことを示しているのだと思っています。
この記事では掌蹠膿疱症について、以下の4つの項目に分けて、皮膚科やクリニックのホームページに記された情報をまとめます。
まずは一般的な掌蹠膿疱症について、知識を深めましょう!
1. 掌蹠膿疱症とは
2. 掌蹠膿疱症の原因
3. 掌蹠膿疱症の治療方法
4. ビオチン療法とは
1. 掌蹠膿疱症とは
手のひらや足の裏に小さな水ぶくれ(膿疱)が次々とできる、感染によらない(無菌性の)難治性慢性皮膚疾患のことです。
写真はガビガビになった右手。指が腫れて曲がりませんでした。
手のひらや土踏まず、かかとなどに赤みが表れ、膿疱ができ、しばらくするとかさぶたの様になって皮がむけます(上写真の状態)。また、新しい膿疱が別の場所にできる、ということを繰り返します。ひどくなると手のひらや足の裏全体の皮膚が赤みを帯びて厚くなり、うす皮がむけ、ひび割れし、痛みを伴います。また、膝や肘などに赤みが表れたり、爪が変形することもあります。胸鎖関節部などに痛みを伴う骨関節症状を伴うこともあります。
この膿疱は一種のアレルギー反応によって白血球が集まったものと考えられていて、無菌性であるため、体の他の部位や他人にうつることはありません。
掌蹠膿疱症は慢性の治りにくい病気ですが、決して治らない病気ではありません。その時の症状に応じて根気強く治療することが大切です。通常は3~5年ぐらいでよくなります。
日本における掌蹠膿疱症の罹病率は0.12%で、13万人以上の患者がいるとされています。これは1000人に1人いるかいないかの割合です。ただしこれは診断された数なので、実際にはもっと多くの方が掌蹠膿疱症で悩んでいるのではないでしょうか。
【間違えやすい疾患】
症状が掌蹠膿疱症とよく似ているため、見た目では判断しにくい皮膚疾患です。
- 異汗性湿疹(汗疱)
- 白癬(水虫)
- 湿疹
2. 掌蹠膿疱症の原因
6~8割の患者は原因不明とされ、はっきりとした原因は今のところわかっていません。
ただし、症状の悪化につながる原因として、病巣感染(虫歯・歯周炎・中耳炎・扁桃炎・副鼻腔炎など)や、歯科金属などの金属アレルギー、喫煙などがあるといわれています。
扁桃腺炎がある場合、扁桃腺を摘出することで皮膚の症状がよくなることがあります。また、虫歯や中耳炎、副鼻腔炎(蓄膿症)などがある場合は、それらの治療を行うことで治癒することもあります。禁煙や歯科金属除去によって治癒した例も報告されています。
しかし、多くの場合原因は明らかにならず、上記のような治療のみで治癒する患者さんはごく一部です。
3. 掌蹠膿疱症の治療方法
①疑わしい原因がある場合、まずは個別に対応した治療を行います。
- 禁煙・・・長期間の喫煙が原因と考えられる場合、禁煙をすることで治癒が期待できます。
- アレルギー原因金属の除去・・・金属アレルギーが原因と考えられる場合、歯科器具などの金属を除去することで治癒が期待できます。
②原因が不明の場合、外用薬(ぬり薬)を用いた皮膚科的な治療を行います。
-
ステロイド外用薬・・・皮膚の炎症を抑えることにより、ある程度の効果が期待できます。長期使用による副作用に注意が必要です。
③これで治らない場合は次のような全身治療を行います。
- 光線療法・・・長波長紫外線という光を照射することで治療を行います。日焼け、白内障、皮膚癌の発生などの副作用があります。
- ビオチンの内服・注射(ビオチン療法)・・・掌蹠膿疱症が起こっている場合、ビオチン(ビタミンの一種)が不足していることが多いため、 血中ビオチン値が上昇するようビオチンの内服・注射を行います。ビオチンはビタミンの一種ですので、副作用はないとされています。
- ビタミンA剤(チガソン)の内服・・・催奇形性があり、将来子供をもつ可能性のある患者の治療としては適しません。
4. ビオチン療法とは
近年、掌蹠膿疱症に対するビオチン療法が脚光を浴びています。掌蹠膿疱症はビオチンの不足によって悪化している可能性がありますので、それを補う治療法です。
ビオチン療法は女優の奈美悦子さんが掌蹠膿疱症を治したことで一躍有名になりました。
ビオチンは薬としては古くから使用されていて、急性・慢性湿疹や脂漏性湿疹、小児湿疹などに使われていました。また、腸内細菌叢改善、便秘解消の意味でニキビの治療として使用されています。それ以外に、酒さ、アトピー性皮膚炎や花粉症の方にも効果があります。「免疫系にも関係して免疫異常を改善してアレルギーを起こりにくくする効果もあるのではないか」という報告もあります。比較的安全で安価な薬といえますので、通常の治療でいつまでも効果が見られない方は、一度試してみてもよい治療法だと思います。
掌蹠膿疱症の患者の血中ビオチン濃度を測定すると、正常の人に比べて著しく低下している事がわかっています。また、代謝・免疫異常を生じるため、糖尿病、クローン病、IgA腎症などを合併する人もいます。
ビオチンは食事にも含まれており、さらに腸内細菌によって作られて腸から吸収されるため、通常不足することは少ないです。ただし、腸内で悪玉菌の勢力が強いと、ビオチンは悪玉菌によって壊されたり食べられてしまうため、ビオチンが欠乏状態になり、免疫機能に異常がおこって病気に至ることがあります。
ビオチンはビタミンB群の一種でビタミンHとも呼ばれます。体内で糖分、脂肪、蛋白の代謝にかかわる4種類の酵素をサポートする重要な役割を担っています。ビオチンが欠乏すると、
などの異常が起こり、それが掌蹠膿疱症やアトピー性皮膚炎などの皮膚病を招くといわれています。
【ビオチン欠乏の原因】
- 生卵の食べ過ぎ・・・卵の白身に含まれるアビジンという蛋白がビオチンの働きを邪魔するため欠乏症が起きる。加熱すれば問題ない。
- 喫煙・・・体内でニコチンが処理される際、ビオチンが多量に消費される。
- 抗生物質・・・腸内細菌のバランスが崩れてビオチンの産生力が弱まる。
【服用のしかた】
- ビオチン、整腸剤、ビタミンCを一緒に服用します。
- 1日3回、時間を決めて服用してください。(ビオチンは排出されるのが早いことと、血液中に一定の濃さで薬が入っていることが必要なため)
- 空腹時の服用でも副作用はありません。
【ビオチン療法って効くの?】
ビオチン療法だけで十分な効果を得られることはそれほど多くないのですが、その他のつけ薬の治療や光線療法と組み合わせることで高い効果を得られる場合があります。ビオチン自体は副作用がほとんどなく、安価な治療法ですので試してみてもいいでしょう。(※これは一般論です。)
5. まとめ
今回は、掌蹠膿疱症をあつかう皮膚科やクリニックの情報を20件ほど網羅的にまとめました。
全体的な感想として、ビオチン療法はあまり積極的に取り入れられていない(信じられていない)ように感じました。中には「ビオチン療法はやりません」と明記している病院もあったほどです。
しかし私の意見としては、ビオチン療法は効きます。必須と言ってもいいと思います。(ただしこれは、上に書いたような明確な原因(喫煙、扁桃腺炎、金属アレルギー等)がない、私のような場合です。)
次回以降、「じぶん実験をはじめるまで」「なぜビオチン療法は信じられていないのか?」「ビオチン療法に足りない物」
経験ふまえて書いていこうと思います。